2025年10月14日

勝利したのはルメール騎手と長年親交のあるミカエル・バルザローナ騎手。過去には短期免許でJRAにも遠征した経験がある。レース後、ルメール騎手は「彼は実力のあるジョッキーで、若い頃からレースに真摯に向き合ってきたのを知っています。凱旋門賞はフランス人ジョッキーにとって夢のレース。まだ勝ったことを信じられないようでした」と、まるで自分のことのように喜びを語った。

レース後に2人はパリ市内で食事を共にし、友情を分かち合ったという。「私たちはとても近い存在で、兄弟のように接してきました。凱旋門賞のような世界最高峰のレースに勝つことがどれほど難しいか、そして勝ったときの感情がどれほど特別か、私も日本で大きなレースを勝った時に同じ気持ちを経験しました。だからこそ、彼の勝利を心から讃えたかったです」と話す。

勝利馬ダリズは、ルメール騎手がかつて専属契約を結んでいたアガ・カーン殿下の所有馬。伝統のグリーンとレッドの勝負服がフランスのターフに輝いた。「今年の初めに殿下が亡くなられたこともあり、この勝利は陣営にとって大きな意味を持ったと思います」とルメール騎手は静かに語った。

帰国後の3日間開催で7勝を挙げたルメール騎手。中でも印象に残ったのは、アーモンドアイの産駒アロンズロッドと、イクイノックスの全妹イクシードの走りだった。アロンズロッドについてはこう語る。「前走からの休み明けでどこまで状態が戻っているか不安もありましたが、返し馬の感触から“これは動ける”と感じました。ギアが上がるまで少し時間がかかりましたが、最後までしっかり脚を伸ばしてくれました。お母さんのアーモンドアイは東京コースが“庭“のような場所でしたからね(笑)。この子もこのコースが合っています」。イクシードはラスト3ハロンを33秒4の末脚で差し切り勝ち。「レースではまだ若さを見せましたが、それでも能力だけで勝ち切りました。キタサンブラックのよい部分をしっかり受け継いでいます。今後さらに成長していくのが楽しみです。もちろんクラシック路線も期待していますが、まずは無事にステップを踏んでいくことが大切です」と冷静に分析した。

今週末は秋華賞（京都・芝2000m）。ルメール騎手は先週、美浦トレーニングセンターでエンブロイダリーの最終調整に騎乗した。管理する森一誠調教師からは「この馬のことはよく分かっているから」と特別な指示はなく、信頼の高さがうかがえる。「跨った感触は、春のオークス前よりも明らかによかったです。オークスでは少し力んで、ちょうど息が入ったタイミングでレースが動いてしまいました。距離が短くなる今回は、今までの経験がプラスに働くと思います」

取材の最後に、ルメール騎手は笑顔でこう明かしてくれた。
「バルザローナの優勝トロフィーに触れさせてもらいました。あの瞬間、私の中でも何かが再び動き出した気がします」

凱旋門賞の夜に感じた友情と刺激。
その余韻を胸に、彼の次なる挑戦――来年のロンシャンへ向けた新しい旅が、すでに始まっている。

SNS企画「#ルメールへの質問」に届いた読者からの質問に答えてくれました。

質問（オグリキャップさん）：
『CL by C.ルメール』のストアが一般公開の前にプレオープンされていると聞きました。以前ポップアップには伺いましたが、常設ストアはどんな雰囲気ですか？」

ルメール騎手：
ブティックとカフェを作ったのは、ファッションを通して競馬の世界をより身近に感じてほしいという思いからです。店内には実際のジョッキールームも再現し、ファンの皆さんが普段見ることのできない裏側の空気を体感できるようにしました。勝負服やジョッキーパンツに触れて、その生地の軽さを感じてもらえるのはもちろん、ヘルメットやブーツなど、レースで使われる道具も展示しています。このブティックのオープンは、ブランドにとって新しい一歩です。多くの競馬ファンの方々に足を運んでいただき、感想やフィードバックを聞かせてもらえたらとても嬉しいです。

＊ちなみにプレオープンはこれまでにオンラインで購入履歴のあるお客様のみ予約が可能です。詳細は10月10日発信のニュースレターで既にご案内済みとのことです。
また一般へのグランドオープンは11月6日(木)からです。